1.11.99

はるた彗星

びょうしん

感覚をおぼえているのに、熱だけわすれてしまいそうだ。

この季節の、「冷え」が引いていく波のなかでは、どうして、置いていくのと思う。

 

冷たい指がよかったの。

冷たい頬がよかったの。

あなたが、ふれたのがわかるから。

 

はるがきたら、離れてしまわないか。

口実が、失くなってしまわないか。

 

ふゆに出会ったこと、消えてしまわないか。

 

当たり前に冬が来るみたいに

当たり前に春が来るみたいに

当たり前にまた明日が来るなんて、

思ったことないの。

 

思ったことなんてないの。

 

はるなんてきらい。

もしかして

どうして消えない?

「好きな人がいるから」

きれい?

「とても。こころが」

どんなひと?

「消えてしまいそうになったひと」

まだ消えたがる?

「もしかしたら」

きみはそばにいてあげられない?

「そばにいれる。でも恋人じゃないから」

じゃあなに?それって、名前がいるの?

「いらないのかもしれないね」

 

どうしてふたりで消えない?

 

「もしかしたら、楽しいことがあるかもしれない」

 

美しいね、きみも。

 

「ありがとう」

 

 

美しいきみの好きな人によろしく。

わたしは先に行くよ。

 

 

「気をつけて、美しいひと

かんのうび

「終わったあと」の男の子がいちばんあったかいと思う、というと

 

変態だね、と笑って返してくれたあなたが好きでした

 

行為自体をわたしはそんなに好きではないけれど、その時その時の男の子の体温がなによりも愛しかった

 

あなたもそうよ、と伝えたつもりでした

 

興奮冷めやらぬあなたの疲れた熱っぽさ

 

もう一度たまらないキスをしたら、もう一度抱いてくれますか

 

官能、とは、快感だけではなく、そのもどかしい感情のことも表現できると思うのです

 

あなたと疎遠にはなったけれど、まだ、その背中に触れた体温が、その腰骨をなぞった感覚を覚えているうちはまだ

 

まだ、未練があるのかもしれません

らくようと

恋愛が、大事なのは知ってる。

ある人には、それがあってもなくてもいいようなことだってことも。

ある人には、それが生死を分けるようなことだってことも。

 

わたしにとって、きみは光になりつつあった。

わたしの後ろには、数えきれないほど失敗してきた恋愛があって、決心や涙があって、それがわたしの弱さであり強みになってきた。

 

「寂しさを感じるたびに、心が削れていく音がする」ときみに伝えた。

傷ついてきたわたしの心が、率直に思ったことだった。

みんなでつっついて食べたホールケーキのような、最後に、クリームがすこしついた苺がひとつ、残っているだけのような。

遠慮や、同情で、なんとかその糸を紡いでいるような、ギリギリのところにわたしはいるのだと。

 

失敗したって、気にするなって。

次に進もうよって、自分に喝を入れるのはいつも自分自身だった。

周りの人が冷たいんじゃなくて、わたしがなにも相談しなかった。しても、無駄って思ってたから。

どうせ、短い人生だと思ってて。

前向きに生きたところで、終わると思ってて。

終わらせる気でいたのです。この手で。

 

でも、単純に考えてみるのも、ありかな?

深く深く考え事をするのが好きで、何十手も先を見据えて行動するのが癖になっていたわたしを、捨ててみようか?

 

きみが手に入らなくったって、わたしは死なないし。

きみがほかの人を愛しても、どうか幸せになってねと言えるし。

きみに二度と会えなかったとしても、きみを忘れないように、どこか心の奥に残っていることを愛しいと思えるようになってみせるよ。

 

ただ、わたしがいま、きみをきっと、好きなんだってことを。

そのことだけをいま、大事にしてあげたいと思う。

 

なんでって、

好きだからだよ。

にじゅうに

「きょう、楽しかったね」

 

例えばそんな会話ができる相手がいたらな、と憧れる。

ひとりぼっちの狭い空間は好きだよ。

まるで、この夜はわたしのものだと。

 

いま、わたしの部屋の壁には34枚の写真が飾られている。すべて美しい。

 

美しい文章を書くひとは、どこでその言葉を手に入れたんだろう。

読み耽る。読み耽る。

死んでみたいという感情が次第に薄れていく。

 

昔から、よく妄想をするこどもでした。

小学校の校長先生の話の間、待ってましたというように体育座りして想像の世界に入り込む。

そうね、物語が好きだったのね。

けれど書けと言われたら書けなかった。

ひらがなも、漢字も、美しくて好きでした。

 

曲線に強いこだわりがありました。

紙面でも、立体でもそれは同じこと。

理想が高いのはこの頃からもう、始まっていたのね。

身よりは骨が好きです。

大丈夫、皮膚を剥いだりはしませんので。

 

目は悪いけれど、誰かの表情の変化にはすぐに気がつきました。

耳もきっとよくはないけれど、意思を持つ音はよく聞き取れました。

幽霊と会話するのなんて、簡単です。

たとえば視えてなくとも。

 

美しい友人たちへ。

出会えたことに感謝します。

彼らは純粋で、時には残酷で、でも愛をくれた。

感謝します。

どこにいても、わたしの顔を思い出せなくとも、きっとお元気で。

 

母へ。

きらい、じゃないけど、すきにもなれなかった。ごめんね。

あなたには数えきれないほどの感謝状を贈りたい、一緒に花束も。

数えきれないほどの眠れない夜を、「おかえり」と許してくれた偉大なる優しさ。

ありがとう。

 

父へ。

強く厳しい、繊細なひと。

ずっとそのままで。

あなたからもらった沢山の才能やセンスが、わたしを支え、助けてきた。

わがままで頑固でしたね、お互い。

ありがとう。

 

兄へ。

会話をするよりも、隣でテレビを観て笑うほうが多かったね。

口数は元々少ないけれど、わたしのために口を結んで我慢したことも多かったと思います。

地球より広い心と、あたたかい手のひらに合掌。

ありがとう。

 

猫へ。

愛してる。

愛したきみは、星になったんだよね。

だから曇りでも星空が好きだよ。

愛してる。

 

『はる』へ。

形のない、わたし。

殺してしまってごめんね。

また、もし、生まれ変わっても、またわたしを選んでください。

気が向いたらで、いいよ。

 

 

なかなか、長くなったけれど。

 

どうかこれから先、何度でも、桜が咲きますように。

雨が降りますように。

彗星が流れますように。

 

はるた、すいせい。

かがやいて

彼の名前には、「輝」という文字が入っていたから、つい、綺麗だねと言ってしまったの。

彼は、

「綺麗かな?最高に汚いと思う」

と返した。

ああ、彼「も」、この世が憎いひとだ。

消えたいひとだ。

「汚いところも綺麗だよ」

と伝えた。

でもわたしの気持ちはきっと伝わらない。

だからせめて、彼に明日も太陽の光が当たりますように。

彼の瞳が、眩しいを拾いますように。

てんじょう

なぜ、あなたを「すき」なのかを考えた。

 

もし仮にわたしが自殺を図ったとして、

もし仮にそれがなんらかの形で優しい誰かに助けられたとして、

予定外にも生き延びてしまったとき。

 

医療機関の白いベッドで不覚にも目を覚ましてしまったわたしの視界。

どうでもよくなったはずの世界。

 

それはきっと真白い天井でも、見知らぬ看護師の顔でもなく。

 

きっとあなたなんだ。

 

全てを投げ捨てて、あなたは駆けつけるだろう。

安否を知るまでもなく、とにかく涙顔で駆けつけるんだろう。

 

かみさまどうか、あの子を助けてください。

 

そんな、泣き虫なあなたのことだから。

 

 

それが想像できるから、わたしは「すき」なんだろう、あなたを。

 

抱きしめて欲しい。

 

食べかけのアイスが溶けたあなたの部屋で。