1.11.99

はるた彗星

まちあわせ

別れを告げる言葉で、惚れ直してもらえるような、そんなひとになりたかった。

 

まるい月が綺麗で好きだったのに。

満月でなくても好きだったのに。

一眼レフから覗いた十六夜がまんまるではないこと、気づいてしまって美しくないと絶望した自分に絶望したんだ。

 

もう子供じゃ、子供じゃ居られない。

 

「大丈夫だよ」と言って、自分で線を引くのは簡単だった。

その線は直線。

その内側では誰でも孤独、誰でもひとりぼっち。

 

「大丈夫だよ」と言ってくれて、あなた自身の線のなかに入れてくれた。

その線は曲線。

初めて内側に誰かが居る。

 

ほんとうは期待したい。

落とされたくない。

期待したい。

期待してる。

傷つきたくない。

期待してしまう。

待ってしまう。

待ちたい。

待ってる。

ひとりは苦しい。

好き。

待ってる。

寂しい。

待ち遠しい。

好き。

好き。

好き。

 

 

「来たよ」

 

 

そのひとことで、ぜんぶ許してあげる。好き。

はねとつめ

『能ある鷹は爪を隠す』

 

 

遠くで羽ばたいた誰かの、爪の切られる音が聴こえる。

爪切りって、羽の数だけあるんだ、たぶん。

 

ただ失ったものは翼ではないから、彼はまた飛べるだろう。

 

それでも、武器を奪われた彼は。

 

 

「もう、闘えないんだ、ぼく」

 

 

……なにを。

 

 

「何を言ってんのさ、また何回でも伸びるから」

 

 

君が知っていればいい。

 

ぼくの爪の鋭さも、折れた過去も、また伸びた先の未来も。

 

そう言ってくれた君だけが知っていればいい。

 

 

『能ある鷹は爪を隠す。君も守る』

かみかくし

どうしてわたし、あんなに怒ってたのかな。

あんなに彼に当たって、どうかしてた。

 

友人が少し苦しげに笑う。

友人は最近、前よりずっと綺麗になった。

好きな人とすれ違うたびに涙を流していた、悲しい時期が彼女にもあった。

 

向き合えば向き合うほど喧嘩をしていたある時、彼女から距離を置くことにしたという。

それから、その好きな人以外とのたくさんの出会いがあった。

 

彼を知ってから、他を知ったことを後悔していない。

 

と、友人はまた笑う。

 

わたしだけが待っていると思っていた。

わたしだけが寂しくて、ひとりぼっちなんだと思っていた。

彼を忘れようとして、焦って、被害妄想して、自分から傷ついて。

彼自身を見ていなかったのはわたしの方だったの。

わたしにナイフを突きつけていたのは彼じゃない、わたしだった。

 

10は要らない、1でもいいから、彼の世界を知りたいと思った。

全てを理解することが全てじゃない。

育ちも好みも正反対の彼がくれた、この幸せな気持ちが、答えだと知ったの。

 

 

友人は最近、前よりずっと綺麗になった。

今度、彼女と彼の結婚式に行く。

彼の傍らに立ち、ドレスを纏った彼女は、今よりもまた綺麗になるんだろう。

 

 

雲外蒼天。きみたちはとても美しい生き物。

めいきゅう

一番に思い浮かぶ顔はいつだってあなたなのに、いつだってわたしは矛盾している。

あなたが欲しいはずなのに、「他」ですら求めてしまうその心はわたしだって問いたい。

あなたがいれば他になにも要らないんです、というセリフは、すでに手に入っているひとが主張する言葉だと思うんです、本当に。

どんなことがわたしにとって「良い」のかわからず、「悪い」結果に涙が出る所存です。

決してあなたのことをぞんざいに扱っているわけではなく、わたし、とりあえず悲しいです。

とりあえず、「好き」って言っときゃいいですか。

いきいそぐ

YES=NO。

 

気分の上下が激しい。

風船のように膨れ上がった人間不信感。

永遠に解けない劣等感の呪縛。

 

「めんどくさいよ、わたしの相手は」

 

ほっといて=そばにいて。

 

わたしの手を離さないで。

わたしから目を離さないで。

 

 

「いいよ。わがまま聞くのが俺の仕事」

 

 

器の大きさは、愛情に比例するのか。

 

わたしの親は、わたしに直接「愛してる」と言ったことはない。

だけどわたしは親に愛されていたと感じるし、実際そうだと思う。

わたしたちの関係はそれでよかった。

 

なぜ、恋人には言葉を求めてしまうのか。

 

社会で得た“大人のフィルター”が邪魔をして、どれもが自己中心な嘘に見える。聞こえる。

救われない。

だれも、救われなかった。

 

お願いだから傷つけないで、わたしの言葉。

わたしの目。

わたしの手。

彼を傷つけないで。

 

どうせ、離れて行くくせに?

 

 

「もう、嫌いだよ」

 

 

あぁ、またひとり傷つけた。

 

 

びょうしん

感覚をおぼえているのに、熱だけわすれてしまいそうだ。

この季節の、「冷え」が引いていく波のなかでは、どうして、置いていくのと思う。

 

冷たい指がよかったの。

冷たい頬がよかったの。

あなたが、ふれたのがわかるから。

 

はるがきたら、離れてしまわないか。

口実が、失くなってしまわないか。

 

ふゆに出会ったこと、消えてしまわないか。

 

当たり前に冬が来るみたいに

当たり前に春が来るみたいに

当たり前にまた明日が来るなんて、

思ったことないの。

 

思ったことなんてないの。

 

はるなんてきらい。

もしかして

きみはどうして消えないの?

「好きな人がいるから」

きれい?

「とても。こころが」

どんなひと?

「消えてしまいそうになったひと」

まだ消えたがる?

「もしかしたら」

きみはそばにいてあげられない?

「そばにいれる。でも恋人じゃないから」

じゃあなに?それって、名前がいるの?

「いらないのかもしれないね」

 

どうしてふたりで消えない?

 

「もしかしたら、楽しいことがあるかもしれない」

 

美しいね、きみも。

 

「ありがとう」

 

 

美しいきみの好きな人によろしく。

わたしは先に行くよ。

 

 

「気をつけて、美しいひと