1.11.99

はるた彗星

ゆきおめん

親元を離れてから、ハルは「男性」というものを知った。

SNSで知り合い、出会うことが多かった。

一人暮らしをしてみて大変なことはたくさんあったけれど、ひとりが寂しすぎるということはない。

ひとり空間に浸れるその瞬間は苦ではなかった。

 

液晶の向こうの男たちは、歳上・同い年・歳下に関わらずハルの無垢な人柄に惹かれまず会いたがる。

だからハルは、一緒にいて楽しめそうだと思うひととはすぐに会えた。

彼女のタイプは、「作り笑顔をしなくてもいいひと」。

 

ハルがはたちという華を見送った年のクリスマス、会いたいひとがいた。

 

クリスマスイブの24時、狐の鳥居のまえにいきます。

 

彼はそれに、「行かない」と言った。

 

ハルが拒否されたのは、それが初めてだった。

彼はクールで、どちらかというとあまり笑わなそうな、悪く言えばつれない男だった。

だからハルは、笑ってほしかったのだ。

自分と、一緒に。

でも彼は年を越えたら遠方へ旅立つらしい、だからそのまえに、すきなひとができるとつらいと言う。

 

好きになりたくないから、会わない。

 

不思議とハルは、美しい感情だとおもった。

たしかに言われたときは納得はいかない、だってすきになるかもわからないから。

 

「ハル。ごめんね」

 

あぁ。

許そうか。

優しく、悲しい笑顔をしているんだとおもった。

そうであってほしかった。

 

あの夜から、1年以上は経っただろう。

 

 

拝啓、雪のひと。

元気でいますか。

すきなひとはできましたか。

めいきゅう

一番に思い浮かぶ顔はいつだってあなたなのに、いつだってわたしは矛盾している。

あなたが欲しいはずなのに、「他」ですら求めてしまうその心はわたしだって問いたい。

あなたがいれば他になにも要らないんです、というセリフは、すでに手に入っているひとが主張する言葉だと思うんです、本当に。

どんなことがわたしにとって「良い」のかわからず、「悪い」結果に涙が出る所存です。

決してあなたのことをぞんざいに扱っているわけではなく、わたし、とりあえず悲しいです。

とりあえず、「好き」って言っときゃいいですか。

いきいそぐ

YES=NO。

 

気分の上下が激しい。

風船のように膨れ上がった人間不信感。

永遠に解けない劣等感の呪縛。

 

「めんどくさいよ、わたしの相手は」

 

ほっといて=そばにいて。

 

わたしの手を離さないで。

わたしから目を離さないで。

 

 

「いいよ。わがまま聞くのが俺の仕事」

 

 

器の大きさは、愛情に比例するのか。

 

わたしの親は、わたしに直接「愛してる」と言ったことはない。

だけどわたしは親に愛されていたと感じるし、実際そうだと思う。

わたしたちの関係はそれでよかった。

 

なぜ、恋人には言葉を求めてしまうのか。

 

社会で得た“大人のフィルター”が邪魔をして、どれもが自己中心な嘘に見える。聞こえる。

救われない。

だれも、救われなかった。

 

お願いだから傷つけないで、わたしの言葉。

わたしの目。

わたしの手。

彼を傷つけないで。

 

どうせ、離れて行くくせに?

 

 

「もう、嫌いだよ」

 

 

あぁ、またひとり傷つけた。

 

 

びょうしん

感覚をおぼえているのに、熱だけわすれてしまいそうだ。

この季節の、「冷え」が引いていく波のなかでは、どうして、置いていくのと思う。

 

冷たい指がよかったの。

冷たい頬がよかったの。

あなたが、ふれたのがわかるから。

 

はるがきたら、離れてしまわないか。

口実が、失くなってしまわないか。

 

ふゆに出会ったこと、消えてしまわないか。

 

当たり前に冬が来るみたいに

当たり前に春が来るみたいに

当たり前にまた明日が来るなんて、

思ったことないの。

 

思ったことなんてないの。

 

はるなんてきらい。

もしかして

どうして消えない?

「好きな人がいるから」

きれい?

「とても。こころが」

どんなひと?

「消えてしまいそうになったひと」

まだ消えたがる?

「もしかしたら」

きみはそばにいてあげられない?

「そばにいれる。でも恋人じゃないから」

じゃあなに?それって、名前がいるの?

「いらないのかもしれないね」

 

どうしてふたりで消えない?

 

「もしかしたら、楽しいことがあるかもしれない」

 

美しいね、きみも。

 

「ありがとう」

 

 

美しいきみの好きな人によろしく。

わたしは先に行くよ。

 

 

「気をつけて、美しいひと

かんのうび

「終わったあと」の男の子がいちばんあったかいと思う、というと

 

変態だね、と笑って返してくれたあなたが好きでした

 

行為自体をわたしはそんなに好きではないけれど、その時その時の男の子の体温がなによりも愛しかった

 

あなたもそうよ、と伝えたつもりでした

 

興奮冷めやらぬあなたの疲れた熱っぽさ

 

もう一度たまらないキスをしたら、もう一度抱いてくれますか

 

官能、とは、快感だけではなく、そのもどかしい感情のことも表現できると思うのです

 

あなたと疎遠にはなったけれど、まだ、その背中に触れた体温が、その腰骨をなぞった感覚を覚えているうちはまだ

 

まだ、未練があるのかもしれません

らくようと

恋愛が、大事なのは知ってる。

ある人には、それがあってもなくてもいいようなことだってことも。

ある人には、それが生死を分けるようなことだってことも。

 

わたしにとって、きみは光になりつつあった。

わたしの後ろには、数えきれないほど失敗してきた恋愛があって、決心や涙があって、それがわたしの弱さであり強みになってきた。

 

「寂しさを感じるたびに、心が削れていく音がする」ときみに伝えた。

傷ついてきたわたしの心が、率直に思ったことだった。

みんなでつっついて食べたホールケーキのような、最後に、クリームがすこしついた苺がひとつ、残っているだけのような。

遠慮や、同情で、なんとかその糸を紡いでいるような、ギリギリのところにわたしはいるのだと。

 

失敗したって、気にするなって。

次に進もうよって、自分に喝を入れるのはいつも自分自身だった。

周りの人が冷たいんじゃなくて、わたしがなにも相談しなかった。しても、無駄って思ってたから。

どうせ、短い人生だと思ってて。

前向きに生きたところで、終わると思ってて。

終わらせる気でいたのです。この手で。

 

でも、単純に考えてみるのも、ありかな?

深く深く考え事をするのが好きで、何十手も先を見据えて行動するのが癖になっていたわたしを、捨ててみようか?

 

きみが手に入らなくったって、わたしは死なないし。

きみがほかの人を愛しても、どうか幸せになってねと言えるし。

きみに二度と会えなかったとしても、きみを忘れないように、どこか心の奥に残っていることを愛しいと思えるようになってみせるよ。

 

ただ、わたしがいま、きみをきっと、好きなんだってことを。

そのことだけをいま、大事にしてあげたいと思う。

 

なんでって、

好きだからだよ。